乳児が最も感染しやすいRSウイルス
RSウイルス感染症は、RSウイルス(Respiratory syncytial virus(レスピラトリーシンシチアルウイルス)に感染し発症する呼吸器系の疾患です。
秋から冬に流行しやすいのですが、夏の間にも毎週感染者が見られています。
赤ちゃんが最も感染しやすい感染症であり、乳幼児の代表的な呼吸器感染症です。
また、RSウィルスは一度感染しても免疫が十分にできず、繰り返し感染してしまいます。しかし、何度も感染するうちにだんだん免疫ができていき、症状は軽くなっていきます。
では、RSウイルス感染症とはどのような病気なのでしょうか?
主な症状
- 鼻水
- のどの痛み、腫れ
- 咳
- 発熱(数日続く)
2~8日の潜伏期間を経て、風邪に似ている症状が現れ1~2週間で治ります。
しかし、乳幼児の感染者のうち3割程度は細気管支炎や気管支炎、肺炎を発症します。
咳の増強、喘鳴(呼吸する時に「ゼイゼイ」「ヒューヒュー」と音がする)、多呼吸な
どが見られます。
RSウイルス感染症は、風邪症状から肺炎症状まで様々であり、重症化も見られます。
冬場に乳児が鼻水、咳に引き続いて「ゼイゼイ」してきたような場合は、30~40%がRSウイルス感染症によるものと考えられます。
*重症化する傾向にあるのは?
生後3ヶ月未満の赤ちゃんや早産児、循環器系の疾患を有する幼児。呼吸機能の弱い老人や慢性肺疾患患者、免疫不全患者など。
1歳未満の赤ちゃんの場合、急速な悪化による無呼吸発作や突然死の危険性もあることから油断できません。
原因
- RSウイルス(風邪症状をもたらす一般的なウイルス)
- 飛沫感染・接触感染
RSウイルスの感染力は非常に強いです。
そのため1歳までに半数以上、2歳までにほぼ100%が感染すると言われています。
一度感染しても免疫が十分にできず、大人になっても再感染することがありますが、何度も感染するうちにだんだん免疫ができ、あまり重症化しないようです。
治療方法
RSウイルスには特効薬がないため、対処療法が主体になります。
安静が大切で、脱水になると、喉や気管の痰が吐き出しにくくなるので、水分補給により、喉を潤すことが必要です。
お部屋の加湿に気をつけたり、楽な体位などの工夫をしてあげるのもよいでしょう。
抗生物質は効かないのですが、二次感染(細菌感染)のおそれがあるときは使うことがあります。
激しい咳や喘鳴で呼吸困難になった場合(咳込んで顔色が悪くなる)、水分がとれなくなると脱水となり入院が必要になることもあります。
予防法は?
- 外出後や食事前は念入りに手洗いをし、アルコールで手を消毒する
- 外出時、マスクの着用を心がける
- うがいをする
- 風邪をひいている家族と赤ちゃんをなるべく接触させないようにする
- 流行時は人混みをなるべく避ける
RSウイルスはお母さんのお腹の中にいる時にもらった免疫では感染を防げません。
RSウイルスに対するワクチンはありません。
ハイリスク児(※1)のRSウイルス感染の予防として、ヒト化モノクローナル抗体を流行時期に月1回、筋肉注射します。
保育所など施設内流行を生じやすいので、注意が必要です。
また、家族内感染も多く見られます。
1歳未満の赤ちゃんはインフルエンザよりもRSウイルスによる死亡率が高いということを考えると、予防をしっかり行い家族みんなで赤ちゃんを守りましょう!
(※1)ハイリスク児とは在胎35週以下、生まれつき肺や心臓に病気がある場合で、対象になるお子さんは医療機関に相談してみてください。