本当は怖い!おたふくかぜの「合併症と予防接種」編

前回、「おたふくかぜ」の原因や症状、治療法、予防法についてご説明しました。

「おたふくかぜ」の一番の問題は合併症が多いことです。
いずれも高熱を原因として引き起こされる深刻な病気です。

今回は「おたふくかぜ」の合併症と、お子さんを守るための予防接種についてご説明します。

おたふくかぜ

本当は怖い!おたふくかぜの原因と治療法編

毎年流行が見られる子どもの感染症の代表的なもので、正式には「流行性耳下腺炎」といいます。 両側の耳下腺がしっか […]

おたふくかぜの合併症

(1)無菌性髄膜炎

脳を取り巻く髄膜にウイルスが侵入し引き起こされます。
合併症として多く、ほとんど症状の出ないごく軽い物まで含めれば、おたふくかぜの患者の約半数が罹っていると考えられています。

耳下腺が腫れてから3~10日後に10%の割合で発症します。
高熱、頭痛、嘔吐、首が固くなるなどが症状であり、ぐったりとします。
予後は良好で、大部分は2週間程度で後遺症なく治ります。

特に効果的な治療法はなく、対症療法と安静にしていれば治りますが、症状が激しい時には、医師の判断で入院治療が必要な場合もあります。

(2)脳炎

脳そのものに炎症を起こしており髄膜炎より重い病気です。
髄膜炎に併発して起こるのが殆どで、2~3日で急激に発症し、髄膜炎の症状の他に、痙攣が重く、意識障害などを起こす場合は、脳炎を起こしている可能性があります。
発生頻度は0.2%とあまり多くなく、予後がいいと言われています。

 

(3)精巣(睾丸)炎・卵巣炎

思春期以前はまれで、ほとんどは思春期以降に合併します。
精巣(睾丸)炎は、成人男性の20~30%の頻度で起こり、耳下腺腫脹後4-10日くらいに多いとされます。主な症状は、発熱、頭痛、悪心、精巣(睾丸)の激痛・腫れ、陰嚢の発赤などで、3-7日くらい続きます。
歩行などで睾丸の腫れが悪化するため、安静が必要ですが、症状は1週間で軽快します。ただし、圧痛は1か月程度続くことがあります。時々、睾丸の萎縮が見られますが片側だけのことが大部分なので不妊症となることはまれです。

卵巣炎は成年女性に現れる症状で、約7%が合併しやすく、症状は下腹部痛が多いようです。
炎症が軽い場合は、その後も正常に排卵等が行われ、重症化しても片方の卵巣のみに影響がある場合がほとんどで、重大な不妊の原因とはなることは少ないようです。

 

(4)膵臓炎

合併率は数%と少なく軽症がほとんどですが、稀に重症化することもあります。
7-10日目頃に多く発熱、上腹部痛、悪心、嘔吐、下痢などの膵炎の症状があり、1週間程度で治ります。

 

(5)聴力障害(難聴)

最も気をつけたい合併症の1つです。
合併率は 0.4%以下といわれますが、子どもに多く見られます。
聴覚細胞の死滅によりおこる難聴なので治療は困難であり、難治性難聴として後遺症が残ることもあります。
発症後3~7日目頃に多く、突然めまい、耳鳴り、嘔吐、ふらつきなどとともに片耳が聞こえにくくなります。
もう片方は聞こえていることから、自覚症状がなく発見が遅れる危険性があるため、おたふくかぜを発症した場合、片方の耳に声をかけてもらいチェックする事もいいかもしれません。

予防接種について

予防手段として、ワクチンの予防接種があります。

おたふくかぜのウイルスから作られた弱毒生ワクチンは、1歳から受けることが出来、接種量は0.5mlを1回、皮下に注射します。

任意接種なので自費負担(一回あたり5000~7000円ほど)となりますが、自治体によっては助成金が出る場合もあるので確認してみるとよいでしょう!!

1回の接種で80~90%の確率で将来おたふくかぜになるリスクを回避出来るとされています。

しかしお子さんが小さいうちでは抗体がなかなか定着しないので、2回接種することが推奨されています。

接種間隔はMRワクチンと同様、5年程度の期間をおいて接種した方が望ましいでしょう。

単独で接種する方が抗体陽性率は上がるのですが、多く行われている麻疹、風疹、おたふくかぜを混合したMMRワクチンでも抗体陽性になる率は73%、2回接種で86%になると言われています。

このワクチンの副作用は比較的少ないですが、接種後2週間程して軽度の耳下腺腫脹や微熱が見られる事があります。

頻度は数%程度で、多くは自然とおさまります。

他にはごく稀に無菌性髄膜炎を発症する事がありますが、これはおたふくかぜワクチンがウイルスを弱毒にしたもののため、毒性が全くゼロではないことによりおこります。

痛みが強い場合や高熱が出た場合は、予防接種を受けた病院を受診しましょう。
その際「おたふくかぜのワクチン」を受けたことを必ず伝えてください

ワクチンによる難聴は非常にまれで数十万人に1人程度と言われています。
自然発症に比べると、副作用からくる合併症は遥かに少ないと言われています。

おたふくかぜに感染してからワクチン接種をしても発症を抑える事は出来ません。

もし自分が子供のうちにおたふくかぜをしなかったというお父さんお母さんがいましたら、ワクチン接種により、お子さんがおたふくかぜになった時に予防効果が期待できます。

流行していないときに接種しておくとよいでしょう。