嘔吐下痢症になったら!? 2次感染を防ぐ対処法や治療法、予防法

毎年秋から冬の乾燥した気候の季節になると流行するのが「嘔吐下痢症」です。
当院でもここ最近、嘔吐下痢症で受診されたお子さんの数がとても増加しています。

大人でも感染すると辛い「嘔吐下痢症」の原因や症状から治療法、そして感染を防ぐための予防法を解説します。

嘔吐下痢症とは?

嘔吐下痢症とは、ウイルス性胃腸炎、感冒下痢症、感染性胃腸炎、具体的にはロタウイルス感染症やノロウイルス感染症などのことをいいます。
色々な言い方があり、混乱してしまうことがあると思いますが、いずれも原因ウイルスは異なりますが同じ病態です。

では、嘔吐下痢症とはどのような病気なのでしょうか?

<主な症状>

  • 嘔吐
  • 上腹部痛
  • 下痢
  • 腹痛

ウイルスは口から侵入し、まず胃で暴れます。
嘔吐がある時が一番きついようで、突然吐き出すことが多いです。
(突然のことなので周りの人はビックリされるかと思います。)

次にウイルスが腸の方に到達すると腹痛と下痢になります。
嘔吐は1日ぐらいでおさまることが多いですが、下痢は数日続きます。

年齢が若いほど下痢は長引く傾向があり、乳児は1週間以上続くことがよく見られます。
下痢は水様性下痢で、色は白っぽくなり、酸っぱいような匂いが特徴的です。

腹痛が強く下痢便に血液が混じる場合は、細菌の可能性(食中毒)がありますので医師に相談してください。
※細菌によっておこる腸炎は一般に食中毒にあたりますので、別にあつかいます。

原因

  • 経口感染
  • 嘔吐物やウイルスが付着したホコリなどを吸い込むことで飛沫感染のような形となります。

    原因となるウイルスはたくさんありますが、有名なのはノロウイルス、ロタウイルス、アデノウイルス、エンテロウイルスなどです。

    治療法について

    ウイルスそのものに効く薬はなく、抗生物質も無効です。
    そのため、症状に合わせた対症治療をします。

    嘔吐に対しては吐き気止めを坐薬のようにお尻から挿 入したり、難しいですが飲み薬を使うこともあります。
    吐き気がある時は水分も食物もストップしてください。

    下痢に対しては腸内環境と改善させるため整腸剤を使います。
    下痢は悪いウイルスを体から排出する防衛反応と考えれば最初のうちは下痢止めは使わない方がいいと思われ、効果もほとんどないと思われます。

    水分摂取について

    最後の嘔吐から1~2時間経ち、大丈夫そうなら水分を少しずつ与えてみましょう。
    与える水分については、お水やお茶より経口補水液の方が腸での吸収が早く、低血糖の予防にもなるのでオススメです。
    その際は薄めずに与えてください。

    市販のものだとOS-1(オーエスワン)などがオススメです。

    OS-1が嫌いなようであればポカリスエットなどでも構いませんが、カロリーオフではなくきちんと糖分の入ったイオン水を与えましょう。

    1回は5cc以下(ティースプーン1杯)で、5~10分間隔で少量ずつ与えます。
    腹痛があったり、吐き気が出たら再び水分をストップしてしばらく待ちます。
    嘔吐がないようなら、水分量を10cc、さらに15ccとゆっくり増やしていきます。
    ※ゆっくり増やすのがポイントです。

    食事について

    水分が安心して飲めるようになったら炭水化物(ごはん、 おかゆ、うどんなど)を少しづつ与えていきましょう。

    乳製品(牛乳、ヨーグルト)、くだもの(りんご、みかんなど)はもうしばらくストップします。
    ※「すりおろしりんご」を与えると腹痛や吐き気がひどくなることがありますのでご注意ください。

    本人がまだ食事がよくとれず元気がない場合はゆっくり静養しましょう。

     


    下痢が続いている場合は感染する可能性がありますので、園や学校は出席停止です。

    嘔吐により、水分もとれず、尿量が減少しぐったりしてきた場合は脱水の可能性がありますので急いで医療機関を受診してください。

    予防法について

  • ロタウイルスに対してはワクチンがあります。
    (生後2か月から7カ月半までしか受けることができません。)
  • うがい、手洗いを徹底しましょう。
    ウイルスは吐物や便の中に多量に含まれており、これらを適切に処理することが大切です。
  • <処理方法について>

    処理をする際は、ビニール手袋やマスクなどを着用し、ウイルスを吸い込まないようにします。
    嘔吐物などは消毒液に浸した布等で覆い、ビニール袋にいれ密封し、廃棄します。
    嘔吐した場所は広めに消毒液を使用し拭き取りましょう。

    汚染された衣類などは手洗いを行った後、塩素系消毒剤による消毒をすることで家族への感染予防となるので安心です。
    アルコール系の消毒剤はインフルエンザ、風邪、一般的な食中毒には有効ですが、ノロウイルスやロタウイルスなどには効果があまりありません。

    嘔吐下痢症による嘔吐・排泄物には、塩素系消毒剤が有効であるため、市販されている物によって異なりますが、塩素系消毒剤を希釈した消毒液を使用し感染拡大を防止しましょう。

    嘔吐下痢症は、感染力が非常に強く、集団生活をしている子どもや家族全員が感染する危険性のある病気です。

    またノロウイルスやロタウイルスにはアルコール系の消毒剤は効果がないため、手指に付着したを減らすには石鹸と流水による手洗いが最も有効な方法です。
    しかし、手洗いの効果を高めるためにアルコール系の消毒剤も併用することをオススメします。

    しっかり予防することで嘔吐下痢症だけでなく、他の病気からもお子さんを守りましょう。